言い出しっぺのヤスと大介のふたりが蜂のように飛び回り、瓢げ市に参加する表現者たちのもとを訪ね、思考をディグる連載「ディグッテハニー(仮)」。

VOL.0の今回はYAMさんを連れて、BOOKNERD店主・早坂 大輔さんのもとへ。2017・18年に八戸、2019年に盛岡で開催し、今年で4年目を迎えた瓢げ市がオンライン開催することについてアイデアを話し合う。テーマは「瓢げ市 of whom, by whom, for  whom」。

前回の初編に続き実に興味深い内容てんこ盛りでお届けする「中編。」のはじまりはじまり〜。

​​<初編はこちら>

《対談者プロフィール》

吉島 康貴(ヤス)

6かく珈琲 店主。

瓢げ市 言い出しっぺ。

https://hyougeichi.thebase.in

早坂 大輔

盛岡市のインディペンデント・ブックストア「BOOKNERD」店主。 本屋だけに留まらず、イベントの企画運営・出版・ショップのブックセレクトなど幅広く活動中。

http://booknerd.jp


YAM

アーティスト/表現者/自由人

PEACE LAND主宰

https://www.facebook.com/peacelandia

金野 大介

Heg.  主宰

「ポジティ部」「クリエイティ部」主将

座右の銘は「野風増で居続けてもいいですか?」

衣料品販売を主軸に営みながら、ご縁で繋がった皆々様(企業から個人まで幅広く)からのご依頼、ご要望に、いつも身を乗り出して特攻隊長よろしくお応えしております。

https://www.hegood.jp

Text by 宮本 拓海

https://takumiyamoto.tumblr.com/

フリーランス/企画・編集・執筆

1994年生まれ。岩手県奥州市出身。2019年よりフリーランスとして活動中。

これからの世界

早坂 みなさんの周りにはナーバスになっている人はいますか?

ヤス 瓢げ市周りの人たちではあまりいないですけど、地元で飲食店をやっている方たちは結構ナーバスじゃないですか。盛岡はどうですか?

 

大介 うん、盛岡もナーバスな雰囲気は感じるね。

 

ヤス そのナーバスな雰囲気をどう超えるかっていうのは大事ですよね。結局、人間都合で物事を考えるからそうなっちゃうと思うんですよね。

 

大介 本当はそうじゃないもんね。

 

ヤス 考え方としてはすごい逆だと思っていて。この状況に人が合わせるしかない。今までの状況を人間の都合でキープしようとするから、苦しくなるわけで。今の状況に置かれた、「あなただったらどうするの?」っていう問いがきているだけで、すごくシンプルだと思うんですよね。

大介 俺なんか自分の話で言っちゃうと、ちょっと前まで車で生活していたから、今は家があるだけでも超幸せで、これ以上何もなくていいやっていう状況なんだよね。で、「毎日おもしろいことやれたらいいな」とか、「何かやったことをみんなが喜んでくれたらいいな」って考えて遊んでいるような感覚。もし仮にまた車生活になったとしても一回やっているから、冬は寒いからダンボール多めに用意しとこうっていう準備さえできたらいい、というか。今はもう本当に何が起きても動揺していないぞっていう感じ。だからヤスの話で言うと、今を悲しい状況に感じて慌てている人たちってデフォルトが高すぎると思うんだよね。「人ってそんなに偉くないぞ」っていうところをちゃんとわかっている人は少ないんじゃないかな。ちゃぶ台が1個あって、それを囲んでみんなでこうやって語り合える状況をちゃんと作って、「それだけで最高」って実感できるようにしちゃえばいいのに。本当なんかそういうひと時が愛おしいと思うんだよね。

早坂 僕も同じ意見で、たぶんみんな持っているものが多すぎると思うんです。所有欲というか、やっぱり今持っているモノを失いたくない気持ちがあるから、みんな焦るし、悲観的になる。もともと持っていなければ別に悲しくはならないし、そのモノを失う悲しみはないわけで。今は、そういう境地に達することができるいい機会だと僕は思っているので、みんなもその幸せの定義がモノを持つことじゃなくて、さっき大介さんが言ったように、ちゃぶ台を囲んでみんなで語らうことになったら、社会ってすごくいい方向に変わると思いますね。

大介 結局なにが大切なんだっけって考えた時に愛する人達が一緒にいてくれて、みんなでワイワイできるのが、お金もかからないし、楽しくやれる一番いいことだなって思う。

早坂 そうですよね。その価値観が瓢げ市にあるのか、これまで言葉で表現した方がいないのでわからないですけど、この場にもそういう気持ちが含まれていたらいいなと思いますね。たぶん参加してくださっているみなさんは、上昇欲とか所有欲がある人達じゃないと思うんですよ、たぶん。瓢げ市に参加してくださっているほとんどの人達は、そことは全然違う価値観で生きている人達が多いと思いますね。

 

ヤス そうですね。他のに比べたら、全然売れない市ですからね。でも参加してくれている。

早坂 そうした価値観がこれからのスタンダードになるかもしれない、という示唆を含みながらのコンテンツがウェブで作れるのはおもしろそうですね。声高になるつもりはないですが。

1/4
ポストCOVID-19は新たな日常「NEW NORMAL」時代としてきっと前向きに変化する。真の多様性を迎えるこれからの時代は、美しさと力強で満ち溢れているはず。
「Hello, NEW NORMAL」世界はもっとカラフルだ。  photo: 瓢げ市 2019

自分の意見があって、自分の想いで、ものを買う。

ヤス 早坂さんは、東北ってくくりはどう思いますか?もしくはどう思われていると思いますか?外から来る人達から。

早坂 やっぱり何かしらの妄想、いい意味でも悪い意味でもノスタルジーというかそういうイメージを持って来る人がいますよね。東北はこうあってほしいって思って来る人がたくさんいる。特に東京とかの人達は。でも、そういうのを求めてきても、実際はもうちょっとアップデートされているんですよね。いつまでも妖怪がいるわけではないし、畑耕して暮らしている人達ばっかりじゃないので。だからそれは逆にギャップというか、こんなに進歩しているんだって思って帰る人がたぶん多いと思いますね。

 

ヤス

なんか瓢げ市自体は基本東北の表現者というくくりをしているんですが、オンラインになることでより遠方の人が関わることも増えるのかなと思っているんですよね。もちろんリアルな場では、東北でしかやらないんですけど。

なんか東北は、まだまだよさを活かしきれていないので、もうちょっと何か仕組みを作れたらいいなと思うんです。だってたぶん東北の人たちだけでもお金の循環、生活は回るじゃないですか。もっと昔はひとつの地域だけで事が済んでいたわけで。そのあたりをもうちょっと見直して、活かすことができるんじゃないかなと思っています。

 

大介 自分の生活のサイズ感だよね。例えばコーヒー豆で言うと、八戸で作ったものと沖縄で作ったものの味は絶対違っていていいと思う。作っている場所の気候とか湿度とかでやっぱり味って変わる。日常品とか常にないといけないものはやっぱり地元のもので、他の地域のものはたまにいただくものでいいというか。今は「ブラジルのものがほしい」っていってもすぐ届いちゃう世界になっちゃってて、地域毎の生活の特徴が感じられにくくなっているよね。目立ったもの勝ちみたいになってる。そうじゃなくて、やっぱり自分の家の半径3キロ圏内でいいお店とか、モノが育って、そこで満足できるような豊かさが大事だなと思うね。

ヤス 地域のことになると、行政の仕事も強く関係するから、そういう人たちも自分の住んでいる場所のよさを実感して活かせるといいなと思うんですよね。やっぱり見ている方向が東京とか、都会を目指していたりするとどうなんだろうって。きっと外からその地域に遊びに来る人はそういうことを求めているんじゃないんだろうし。だからもうちょっと何か作れないかなって思いますね。

 

YAM でもなんとなく瓢げ市に参加している人達は、そのあたりはわかっていて、まだはっきりとした形になっていないみたいなところがあるんじゃないかな。なんかそこをはっきり自分の中で形にしていきながら、それぞれの想いで生きていけるといいんじゃないのかな。

大介 本当そうだね。

ヤス 今回のコロナで都市から離れる人がでて、もっとローカルな感じになっていくと思うんですよね。

 

早坂 なるんじゃないですか。僕もそう思います。

ヤス そうですよね。グローバル化はしているんだけど、全然ローカルで事が済むし。

早坂 あとは結局労働環境というか、遠隔で仕事ができるっていうことにみんな気づいたと思うんですよね。全然集まって会議なんてやらなくてもいいし、リモートワークで普通に仕事が成り立つ業界の人達もたくさんいると思っていて。そしたら東京に住んでいる理由がなくなっていくわけですよね。じゃあ地元に帰ったって、自分の仕事ができるっていう人達がいる。これから価値観がどんどん変わる気がしていて、そうするともうちょっとローカルに戻ってくるんじゃないですかね。一極集中している東京がすごいとか東京がえらいっていうのはもう終わりだと僕は思っているんですよ。東京オリンピックを契機にというか、あれが本当に腐敗の象徴でしかないので。往生際が悪いというか、いつまでそれをやっているのっていうことの象徴だと思っていて。あれにもうね、失望した人達は結構な数いるんじゃないかな。

ヤス いざと言う時に命を守ってくれないっていうのは気づいたでしょうね。本当に。

 

大介 戦後それでも復興した人達ってやっぱりすごくて。日本を経済大国まで持っていって、GDPもすごい上げて、世界でもトップにいったのは、一回やっているんだよね。けど、「これでよかったんだっけ?」っていろんな人が気づいてしまっていて。「それよりもうちょっと違う方向に進んだ方がいいんじゃないか」っていうのをそこでわかったんだったら、もう同じ方向には向かわなくていいと思う。一回やって結果がでているんだから、これ以上やっても何の意味もないなって。やっぱり土踏んでいる方が気持ちいいぞって人達がたぶん増えてくるし、大人がそれを続けているとそれが子どもたちにとっての普通、デフォルトになっていく。だからもう一度立ち返らなくちゃいけないのは、自分の心の豊かさ。何が一番気持ちいいかをどう実践していくかってことだと思うんだよね。YAMさんなんか、ひたすら絵を書いているのが一番いいんですよね、写真撮ったりとか。ずっとそれをやっていますもんね。そういう人達が増えていくとおもしろいし、瓢げ市にそういう人たちが加わってくるとどんどん豊かになっていくよね。で、そのあとにお金がちょっと回ってくるっていうか、ついてくるような気もする。最初にそれ狙っちゃうといやらしいからね。今まで通りじゃんみたいな話になっちゃうから。

YAM ついてこさせるシステムだよね。

大介 だから今までのコピーライト、広告もすべてそうだけど、恐怖を煽って「これ買わないとあんた馬鹿だよ」とか、「もう死ぬよ」とか変な話を売り物にしてたけど、そういうのは終わったと思う。

早坂 本当にそうですね。

大介 そうじゃなくて、「買わなくてもいいです、大丈夫です。でもすごいおいしいと思うんですよね」みたいな感じに「え、まじで?」みたいな感じの、誰かが実践したことをその人自身から伝えていくっていうことがすごい大事になると思う。

早坂 今回の状況から思ったのは、ドネーションってあるじゃないですか。共感っていうのがコロナ以降もっと重要になる気がしていて、「この店が好きだから」とか、「この店は継続してほしいから、僕は買い物する」ってことが増えていくと思う。なんかそういうのも正しい買い物の仕方だと思うんですよ。ローカルにお金を落とすこともそうだし。だからすごくいち消費者のマインドとしては、広告とか何かで流されてモノを買うんじゃなくて、ちゃんと自分の意見があって、自分の想いでモノを買うようになっているから、それはすごくいい流れだと思っていますね。

大介 それってやっぱりこういう事態が起こる前から、お客さまとか関わる人に感謝している場所があったからこそできていることだよね。そういう相互扶助がすでにできていたから、今も当たり前のように世界がどんなに変わろうが、むしろ「もっと頑張ってよ」って一票投じてくれている人がいるんだと思う。だからこれから先もそれをやり続けられるといいよね。全然遅くないから、もっともっとやればいいだけだと思う。

まあでも本当にいつもこんな話ばっかりできたら、それでいいよね。いつも流れてくるような誰がどうで、あいつとあいつが別れたとかどうでもいいもん。なんじゃそれ、みたいな。どっかの首相がとか、もういいじゃん。散々わかったんだから、それはもうほっとけよって。そうじゃなくて、毎日朝起きた瞬間から「おはよう〜!今日さー」、なんてずっとこういうことを話せてる方が幸せだよね。地球大丈夫かな?みたいなことから始まる会話をいつもするっていう(笑)。

------後編につづく

<初編はこちら>